2017/11/14  |  日刊工業新聞  |   高エネ研、「ベルII実験」で未知への挑戦・・・実験が理論を超えるか 「反物質」の謎、解明目指す 準備着々



「反物質」の謎、解明目指す 高エネ研、「ベルII実験」準備着々

https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00450605



             ベルII実験の測定機(高エネ研提供)


高エネルギー加速器研究機構(高エネ研)は、宇宙の発展過程で消えた「反物質」の謎の解明を目指す「ベルII」の実験を2018年2月に始める。実験開始に向け、電子と陽電子を衝突させて素粒子反応を観測する測定器の中心部に設置する「ビースト装置」の最終試験が始まった。

高エネ研は茨城県つくば市に設置した次世代衝突型加速器(スーパーKEKB)で素粒子の電子と陽電子を衝突させる計画。衝突頻度を従来の「ベル実験」の40倍に高めて大量のデータを解析し、宇宙の初期に存在したはずの「反物質」が消えた理由の解明を目指す。

衝突数を増やすには衝突以外の背景データを測定し直す必要があった。このため、最終試験中のビースト装置は、この背景データを計測する。

最終試験をクリアしビースト装置が完成すれば、いよいよ測定器に設置できる。高エネ研の小林誠特別栄誉教授は「これまでの実験は理論で予測された現象の確認。ベルIIはその先を行く。つまり保証はない。だが何が出るか興味深い」と期待する。素粒子の実験が理論を超える瞬間に近づいている










2017/11/13  |  YOMIURIONLINE  |    「スーパーカミオカンデ」後継の「次世代ニュートリノ科学連携研究機構」を、東大が推進



 「カミオカンデ」後継機推進、東大が新研究機構
http://www.yomiuri.co.jp/science/20171108-OYT1T50106.html?from=ytop_ylist






ノーベル物理学賞(2015年)で知られる観測装置「スーパーカミオカンデ」の後継機「ハイパーカミオカンデ」計画の推進を目的に、東大は「次世代ニュートリノ科学連携研究機構」を創設し、岐阜県飛騨市神岡町東茂住にある神岡宇宙素粒子研究施設で8日、発足式を行った。

 式典には研究者ら約70人が出席。機構長を務める梶田隆章・東大宇宙線研究所長が「素粒子『ニュートリノ』の研究拠点として世界の中心となることを目指します」とあいさつした後、機構の看板の除幕が行われ、発足を祝った。

 ハイパーカミオカンデ計画は、ニュートリノの質量発見を成し遂げたスーパーカミオカンデの10倍規模の超大型検出器を設置するもので、世界15か国の研究者が参加。地下650メートルに直径74メートル、高さ60メートルの水槽を建設し、2026年の観測開始を目指す。ニュートリノの性質の全容解明のほか、ニュートリノの測定を通じ、超新星爆発の仕組み、星やブラックホール誕生の解明などに挑戦するという。
2017年11月11日 07時22分 C
























2017/11/01  |  YOMIURIONLINE(10/30)  |     防災科学技術研究所が新幹線緊急停止システムに海底地震計データを採用へ



新幹線緊急停止システムに海底地震計データ
http://www.yomiuri.co.jp/science/20171030-OYT1T50076.html?from=ytop_ylist


JR東日本、東海、西日本の3社は30日、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)が日本海溝や南海トラフで運用している海底地震計のデータを、新幹線の緊急停止システムに取り入れると発表した。

従来に比べ地震を10~30秒早く検知できるという。

 提供されるデータは、同研究所が北海道~千葉県沖の日本海溝沿いと、和歌山県沖で観測している約200か所のうちの一部。JR3社は現在、沿線などに自前で設置した地震計によって緊急停止システムを運用している。新たに海底地震計のデータが加わることで、海底を震源とする揺れの検知が早まり、事故防止に役立つとしている。

 JR東日本は11月1日から、東北新幹線の東京駅から福島県内と、上越新幹線の東京駅から熊谷駅(埼玉県)周辺の2区間でデータの利用を始める。ほかの2社は2019年からデータを活用する予定。
2017年10月30日 23時45分 Copyright c The Yomiuri Shimbun











2017/10/28  |  YOMIURIONLINE  |      みずほ1万9千人削減へ…店舗集約、IT強化



みずほ1万9千人削減へ…店舗集約、IT強化
http://sp.yomiuri.co.jp/economy/20171028-OYT1T50006.html

メガバンクの一角であるみずほフィナンシャルグループ(FG)が今後10年程度で国内外1万9000人の人員削減を検討していることが分かった。

グループ全体の従業員数の約3分の1に相当する。超低金利で収益が伸び悩むなか、デジタル化を進めて収益力の強化を図る。

 みずほFGは2017年3月期で6035億円の最終利益を確保したが、今後、金融と情報技術(IT)を融合した金融サービス「フィンテック」の広がりで銀行以外の新興企業が台頭し、事業環境は厳しくなることが予想されている。

 このため、大規模な構造改革に着手し、先手を打つ必要があると判断した。従業員数は26年度までに1万9000人減らす計画だ。新規採用の抑制や退職者を含め、全体の人員を現在の約6万人から約4万人へと段階的に縮小する。










2017/10/26  |  YOMIURIONLINE  |    国際宇宙ステーション(ISS)に搭載したCALET宇宙線検出器を用いた暗黒物質探査について



国際宇宙ステーション(ISS)に搭載したCALET宇宙線検出器を用いた暗黒物質探査について
http://www.yomiuri.co.jp/adv/wol/opinion/science_171016.html




- そして暗黒物質未発見でも可能な社会貢献 -

モッツ ホルガー マルティン/早稲田大学理工学術院助教
CALETから得た最新結果とその解釈

 カロリメータ型宇宙電子線望遠鏡(CALET:CALorimetric Electron Telescope)は、2015年8月に打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)[図1、図2]に取り付けられた宇宙線検出器です。開発および運用は、宇宙航空研究開発機構(JAXA・日本)、アメリカ航空宇宙局(NASA・米国)、イタリア宇宙機関(ASI・イタリア)、さらにこの3カ国の大学・研究機関による国際共同研究の形で行われています。このプロジェクトを主導するのは早稲田大学で、鳥居祥二教授が代表研究者を務めています。直近の宇宙線国際会議(ICRC2017)は韓国の釜山で開催されましたが、そこでCALET研究グループは世界の研究コミュニティに対し、その主要成果である1 TeVまでの電子 + 陽電子宇宙線エネルギースペクトル[図3]を発表しました[参考文献1]。これは20年という長期にわたる数多くの物理学者とエンジニアが成し遂げた成果でもあります。この成果の重要性は、果たしてどの点にあるのでしょうか。






 物理学から見たCALETの主要な目的の1つは、暗黒物質(ダークマター)の対消滅または崩壊の痕跡を明らかにすることです。暗黒物質は新しい素粒子であると広く信じられているもので、その発見は最も注目を集めている研究分野です。 暗黒物質は素粒子物理学における標準理論を超える物理の存在を証明するものとして現在最も有力視されています。標準理論は、既知素粒子同士の相互作用の厳密な計算を可能にし、ヒッグス粒子の存在を予測しました。ヒッグス粒子の発見によって標準理論はしっかりと裏付けられています。

 暗黒物質の存在とその特性の多くは、銀河内での恒星の移動速度や、銀河団周辺の光の曲がり方など、様々なスケールにおける重力的影響の観察から確認されています。暗黒物質の総量は、恒星や惑星、塵雲、ガス雲など普通の物質の総量の5倍にもなると考えられています。

 最近発表された重力波の発見により、重力は一般相対性理論によってきちんと説明することができ異なる重力法則を提案する他の理論を制限することが示されました。

 しかし暗黒物質は重力の影響を受けるものの光とは相互作用せず、普通の物質との相互作用があったとしても非常に弱いため、質量以外の性質はほとんどわかっていません。ところが、暗黒物質を素粒子と考える理論の多くは、暗黒物質粒子が2つの暗黒物質の衝突によって破壊されるなど自己消滅するか、あるいは非常に長い時間をかけて崩壊する可能性があると予測しています。

 どちらのプロセスにおいても、自己消滅や崩壊した暗黒物質のエネルギーは高エネルギーの可視粒子に転換します。

 超新星が生む通常の宇宙線の滑らかなバックグラウンドとなるスペクトルの上に、際立ったピークのある特徴的なエネルギースペクトルを持つ宇宙線成分が存在する可能性があるのです。

 CALETにより測定されたスペクトルは、暗黒物質の痕跡であると解釈できるかもしれないいくつかのステップとピークを示しています。粒子の流束(フラックス)は小さく、エネルギーとともに急速に降下するため、スペクトルのこの構造を解析するためには、優れたエネルギー分解能や、十分な大きさを備えた検出器による宇宙空間での長期観測が必要になります。CALETはこの2つの要件を満たす、TeV領域内でのスペクトルを正確に測定する最初の実験になります。

 宇宙物理学的な近傍の加速源である超新星やパルサー(急速に回転する中性子星)は、まだ統計誤差の大きい現在のスペクトル構造を説明する、より普通の解釈です。従って、スペクトル内の構造が暗黒物質の自己消滅や崩壊によって起こったと解釈するためには、その構造が観測可能な宇宙、つまり超新星やパルサーによっては作ることができないことを確認しなければなりません。


 暗黒物質の性質についての情報は、制限という形でこのスペクトルから抽出することができます。つまり観測されたスペクトルよりも顕著に高いピークを生じると予想されるようなモデルは実験的に棄却されます[参考文献2]。これらは暗黒物質探索の存在を否定する結果なのですが、様々な方法による数々の実験が示す通り、暗黒物質がどのようなものであるかを表すパラメーターを制約しているからです。

 暗黒物質の探索は、CALETプロジェクトの多くの目的の1つです。当プロジェクトは他にも、銀河内における宇宙線の伝播状態を解明するため、比較的近くに存在する超新星残骸の痕跡の探索や、ガンマ線バーストの検出・研究なども行っています。

 CALETは、LIGOや他の検出器が観測したブラックホールや中性子星の合併による重力波イベントに同期する、ガンマ線のシグナルの検出に関わっています[参考文献3]





基礎科学が社会と教育に与えるインパクト

 CALETは数十億円をも費やしたプロジェクトです(H2B輸送ロケットの打ち上げは、それだけで約150億円の費用がかかりましたが、CALET以外のISS補給品も同時に運搬されました)。こうした大規模な基礎科学プロジェクトは、投資に見合うだけの直接的な利益を生まないため、その正当性は常に論争の的になっています。この記事の後半部分では、当研究が社会に影響を及ぼすだろうと私が考える重要な事項を取り上げたいと思います。今回取り上げる項目以外にも、派生技術など多岐にわたる恩恵が当プロジェクトから期待できることは言うまでもありません。

 物理学、特に素粒子物理学は、現代宇宙論の基礎をなすものです。宇宙論とは宇宙の生成に関する学問であり、宇宙における私たち自身の役割の認識に強い影響を及ぼし、人々の行動に影響を与えます。しかしながら、科学は宇宙を記述するのみで、宇宙の、そして私たち人類の存在意義を示すものではありません。科学においては観察に基づいた検証により反証可能な理論を原則とするもので、人間の存在意義のような究極概念の検証は想定できないからです。それでもなお、現代宇宙論はかなり複雑ではあるものの、初期宇宙における均質な熱プラズマから、現在の銀河や恒星系、惑星の状態まで、物質とエネルギー生成の過程を、外的な影響を排除して説明できる理論です。宗教やそれに類する思想は、宇宙の始まりについて理解しやすい解説を提供してくれるため、一般的に人気があります。これらは日常的な知恵や習慣を吸収し、我々の生活に大きな影響を与えています。思想や良心の自由は基本的権利であり、いかなる形態の信仰も尊重されるべきですが、信仰に基づいてなされる個人の行為は社会全体に影響を与えます。これは複雑にもつれた状態とも言えるでしょう。だからこそ私は、宗教的な教えや神話等に代わる唯一の選択肢として基礎科学が重要であり、その地道な究明が必要であると信じるのです。

 高校や大学で教える力学や電磁気学、熱力学は、主に実効的な理論で、ある範囲において予測や計算をするのには有効な知識です。日常生活で無数に観察ができ、あるいは単純な実験で確認されるもので、それらの理論に疑問を抱く理由はほとんどありません。

 一方、宇宙論や関連分野、特に暗黒物質の素粒子的性質の研究においては、仮説の提案と観測による検証のプロセスがダイナミックに進行中であり、教育機関で教えられる確立した理論とは大きく異なることを強調しておく必要があります。

 暗黒物質とは何かという問いに対する答えはまだ出ていないのですが、その探索の過程を知ってもらうことは、学生を含む一般の人々に、科学的手法がどのように機能するかを体感してもらう最適な機会となるに違いありません。

 高等教育におけるフンボルト理念では、研究と教育の一体化、さらには学問の独立(早稲田大学の教旨)が推奨されます。学生には、独立して研究を行える能力が期待されているのです。また研究の手法はそれに精通した者によってのみ教えることができるという発想のもと、教授は学内の研究者から採用されるのが普通です。ところが近年、この体系に疑問を呈する人が少なからず現れ始めました。卒業生の大多数がアカデミックの世界ではなく実業界に職を求めることを受け、大学も将来の雇用主が求めるニーズに合致した教育を提供するべきだとする意見です。大学教育のスタイルの変化は、徐々に進行しつつあります。私個人の意見としては、残念に思う次第です。多くの仕事が人工知能システムに取って代わられようとするなか、独立した研究能力は、アカデミックな世界だけでなく、様々な職域においてますますその重要性を増しています。解決策がすでに存在する場合も、問題点を再考し、既知の手法に疑問を投げかけることは、新たなメソッドの発見という見返りをもたらしてくれることがよくあります。これこそが、技術の進歩を生むのです。既存のメソッドが最良であると考えられている場合でも、再検証を行い反証することで、新たなより良い代替策が見つかることもあります。

 このようなプロセスにおいて、それぞれの課題に貢献したり改定したりするためには、既存の情報(知識やデータ)を徹底的に理解し解析することが必要となります。ところがこの情報の量は、ほぼ全ての分野で、個人が全ての発展を追いかけられる段階を超えて大きくなってしまっているのです。インターネットの活用により特定の問題について迅速に適切な情報を得ることが可能にはなっているのですが、その分誤った情報や時代遅れの情報と有益で正しい情報を見分ける基礎的な力が必要となっています。専門的な知識よりも重要と言えるかもしれません。

 こうした「研究プロセス」や科学的手法を効果的に体現する方法は、教科書から学ぶことはできません。学生が研究を学ぶ正統な方法は指導者(mentor)とともに研究し、その成果を学位論文としてまとめることです。私はこの方法こそが一番の手本だと思います。

 理論と実験/観察が交差する暗黒物質探索のような研究分野では、比較的短い時間軸で直接的に最先端の研究を経験することが可能です。学生がこれらの技術を習得するには、もってこいの研究分野なのです。暗黒物質の性質を解明するという大きな対価が得られるのはまだ遠い先かもしれませんが、その探索過程を通じ、科学教育は確実に多くの糧を得つつあるのです。




図4:右にいるのは、インド出身の博士課程学生、Saptashwa Bhattacharya。JICAプログラムから支援を受けながら、
鳥居研究室で私とともに宇宙線における暗黒物質痕跡の探索を行っている。(彼の論文の1つ:[参考文献4]))。


参考文献

モッツ ホルガー マルティン/早稲田大学理工学術院助教

モッツ ホルガー マルティンは早稲田大学理工学術院の助教である。彼はドイツのフリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルク(Friedrich-Alexander Universität Erlangen-Nürnberg)の大学院課程で学び、2011年にニュートリノ望遠鏡「ANTARES」を用いた暗黒物質探査に関する研究で博士号を取得した。2012年に来日し、東京大学宇宙線研究所においてプロジェクト研究者として研究を行った。2013年に早稲田大学に移り、鳥居研究室ならびにCALETプロジェクトに参加した。
2014年以来、早稲田大学理工学術院国際教育センターにおいて現職に就いている。
学問的関心分野は、天体素粒子物理学、宇宙線物理学および暗黒物質である。















2017/10/23  |  WIRED(10/19)  |    囲碁AI「AlphaGO」の次世代版は、自己対局で「最強」を超えた──その進化の本質と、グーグルの野望



囲碁AI「AlphaGO」の次世代版は、自己対局で「最強」を超えた──その進化の本質と、グーグルの野望
https://wired.jp/2017/10/19/more-powerful-version-of-alphago/





引退”したかと思われていた、世界最強の囲碁棋士が帰ってきた。囲碁の人工知能(AI)である「AlphaGO」が、人間いらずで自己学習する「AlphaGO Zero」に進化したのだ。強さで旧ヴァージョンを圧倒的に上回る技術には、AIをさまざまな分野で役立てていこうというグーグルの親会社アルファベットの狙いが見え隠れする。

TEXT BY TOM SIMONITE

囲碁の世界チャンピオンとして知られていたイ・セドルは、囲碁の人工知能(AI)ソフトである「AlphaGo」に負けるという2016年の歴史的な試合の最中に、そこから立ち去った。そのコンピューターは、すでに確立された理論とは違った動きで彼を惑わせたのだ。これこそが、AlphaGoの神秘性とレヴェルの高さを象徴している。

そして新しいヴァージョンになり、よりパワフルになった「AlphaGo Zero」が、2017年10月18日(米国時間)に発表された。AlphaGo Zeroは、これまで以上に人々を驚かせることだろう。テストでは、イ・セドルに勝ったヴァージョンを100回も完膚なきまでに打ち負かし、2000回を超える対局のなかで独自のアイデアを生成し始めている。

AlphaGo Zeroでは機械に囲碁の手を教え込むうえで、人間に依存しない新しいアプローチを提示した。これはAlphaGOの生みの親であるDeepMindが収益を得ていくうえで役に立つ。なぜなら、昨年のDeepMindは9600万ポンド(約143億円)の損失を出したからだ。同社はグーグルの親会社、アルファベットの傘下にある。

この月曜の記者会見で、DeepMindのCEOであるデミス・ハサビスは、次のように語った。「AlphaGoの心臓部は、新薬発見やタンパク質の立体構造の理解といった科学的な問題にも応用可能です。なぜなら、こうした問題も囲碁と同様に、基本的な要素の組み合わせでできた膨大な数の選択肢を使って、数学の大海を航海する必要があるからです」
自己対局だけで進化するAI

昨年、AlphaGOは機械にとって歴史的な勝利を収めたが、そのオリジナルヴァージョンは多くの無名の人々の経験値のうえに成り立っている。なぜなら、インターネット上の囲碁コミュニティから得られた16万人分ものデータを精査することで、AlphaGoは囲碁について学んだからだ。勝利を収めたあとも、AlphaGoは100万回を超える自身との対局を行い、超人的な自己研鑽を続けている。

AlphaGo Zeroという名称は、囲碁をするにあたって人間の知識を一切必要とせず、自己対局のメカニズムだけでつくられていることから付けられた。ソフトウェアは最初にランダムな動きを複数回行う。これはどんなときに試合に勝ち、どんなときに負けるかを知るため、そして勝ちやすい手を打てるように調整するためにプログラミングされたものである。発売されたばかりの『Nature』誌の記事では、AlphaGo Zeroが2900万回もの自己対局を通じて、いかに地球上で最も手強い囲碁プレーヤーになったかが描かれている。

このプロジェクトでリーダーを務める研究員のデヴィッド・シルヴァーは「私たちは人間の知識という制約を取り除きました」と語る。この発言は、人間が提供するデータなしに学べるAIへの関心が高まっていることを意識したものだ。

DeepMindを含む複数の優秀な研究グループは、試行錯誤から学んで競争や戦いを指示するソフトウェアの開発に取り組んでいる。こうしたソフトウェアは、ロボットの制御など、人間がデータをあまりもたない、もしくはデータが存在しないような分野の難しい問題解決に役立つとみられている。
「美しい」と評されたシンプルな設計

AlphaGo Zeroは前のヴァージョンよりもスマートであると同時に、シンプルでもある。元々は2つの学習モジュールをもち、人工ニューラルネットワークとして知られる技術によって設計されていた。1つは試合中の碁石の配置などを評価し、もう1つは次の手を考えることに特化している。そして3つ目の検索型モジュールで、別の手を選んだ場合どうなるかをシミュレーションしていた。

DeepMindによると、AlphaGo Zeroはより強力なニュートラルネットワークを駆使して、たった1つのモジュールで状況の評価と次の手の決定ができる。そしてシンプルな検索モジュールによって、次の手を選ぶという。

アルバータ大学の教授であるマーティン・ミュラーは、AlphaGo Zeroの新しくシンプルな設計を「美しい」と評価した。しかし彼が言うには、複数の起こりうる結果を検索して最善を選び続けることは、現存するAI技術の限界を示しているという。

「わたしには、ここに複雑な問題の本質があるように思えます」と、ミュラーは語る。「わたしたちは、すべての答えを知っている機能を実装することはできません。論理的思考をもち、未来のことを視野に入れて考える必要があります」

コンピューターにとって、固定されたルールで構成されるボードゲームの先読みをすることは比較的簡単だ。だがエンジニアは、日常のありふれた乱雑な工程をコンピューターに理解させるようなことは、ほとんどできていない。例えば、イケアのソファを組み立てたり、休暇の計画を立てたりと多面的な課題に取り組むとき、人間は論理的思考と抽象化を使ってゴールまでの道筋を立てる。いまのところAIは、こうした作業を認知・実行できないのだ。
応用の可能性が見えてきた

だからといって、DeepMindの技術が役に立たないということではない。グーグルは、すでにそのアルゴリズムを用いてデータセンターの冷房コストを削減している。最近の決算では同社の最初の収益として4000万ポンド(約59億円)を計上していたが、それらはアルファベット傘下のさまざまなサーヴィスに対するものだった。

ハサビスによると、AlphaGo Zeroに使われている概念は、天候の予測や体内のタンパク質の理解などにも応用できる。グーグルを含む多くの企業が機械学習に力を入れているが、これによってさらに多くの広告収入を得られる可能性を示している。

AlphaGo Zeroは、これまで貢献してもらっていた囲碁のコミュニティにも“恩返し”をしてもいる。対局でイ・セドルを驚かせた手のように、前のヴァージョンから得られた新しいアイデアが囲碁の試合を活気づけているのだ。

初めてAlphaGoに負けたプロ棋士であるファン・フイは、現在はDeepMindで働いている。彼はAlphaGo Zeroが、世界で最も古いボードゲームのひとつである囲碁に、さらなるクリエイティヴィティを与えてくれるだろうと述べている。「AlphaGo Zeroの対局はとても人間らしいですが、一方で人間よりも自由にプレイしているように感じます。これは、わたしたち人間の知識という制約がないからだと思います」

彼はAlphaGo Zeroの序盤での強さを特に印象的であると感じ、その戦法に「zero move」という名前をつけている。「わたしたちはAlphaGoと試合をしていたときでさえ、こんな動きは見たことがないのです」

















2017/09/13  |  マイナビニュース  |    激動の半導体メモリ業界はどこに向かうのか? - Micronへの人材流出が相次ぐWestern Digital/SanDisk



激動の半導体メモリ業界はどこに向かうのか? - Micronへの人材流出が相次ぐWestern Digital/SanDisk
http://news.mynavi.jp/articles/2017/09/12/micron_memory/


東芝と米Western Digital(WD)を中心とする「日米連合」が東芝メモリの売却交渉で最終調整に入ったと一部のメディアが報じているが、その陰で、当のWestern Digitalおよびその子会社である米SanDiskから社長・副社長などのトップクラスから一般技術者に至る幅広い人材が、NAND型フラッシュメモリでライバル関係にある米Micron Technologyへ続々転出している様子が浮き彫りになってきた。

WD/SanDisk出身者で固められたMicronのNAND関係の役員陣

SanDiskの共同創業者の1人で2016年まで同社の社長兼CEOを務め、その後Western DigitalのSanDisk買収に伴い、Western Digitalの取締役に就任していたSanjay Mehrotra氏が、2017年5月8日にMicronの社長兼CEOならびに取締役会メンバーに就任したことはすでに報じられたとおりだが、それに続いて、以下の3名がWestern Digital/SandiskからMicronへと移籍し、副社長以上の重要な地位に就任していることが分かった。

Sumit Sadana氏 2017年6月22日付けでエグゼクティブ・バイスプレジデント(EVP)兼チーフ・ビジネス・オフィサー(CBO)に就任。4ビジネス部門を統括するほか、戦略立案やビジネス開発も担当。Sanjay Mehrotra社長に次ぐ地位にあると言える。
前職は、SanDiskのEVP兼チーフ戦略オフィサー(Chief Strategy Officer:CSO)で、エンタープライズ・ソリューション担当ゼネラルマネージャーを兼務していた。

Jeff VerHeul氏
2017年6月26日付けでノンボラタイル(不揮発性)エンジニアリング担当シニア・バイスプレジデント(SVP)に就任。Micronの生え抜きSVPに替わり、NAND型フラッシュメモリの技術開発の陣頭指揮を行う。

前職はSanDiskのCorporate Engineering担当SVPとして、NAND型フラッシュメモリの技術を統括していた。

Anand Jayapalan氏
2017年8月21日付けでMicronのストレージ・ビジネス・ユニット 担当VPに就任。NANDフラッシュ・ストレージのビジネスを担当する。

前職はWestern Digitalのエンタープライズおよびクライアントコンピュート・ソリューション・マーケティング担当VPであった。

Sanjay Mehrotra社長は東芝とNAND型フラッシュメモリの開発・製造に関する協業を提案し、17年間にわたりその協業を推進し、東芝の技術内容を熟知した人物と知られているが、同氏が、古巣のWestern Digital/SanDiskから引き抜いた3名の幹部は、いずれも東芝四日市工場で製造されているNAND型フラッシュメモリの技術やビジネスを熟知した人物である。


いままで、半導体メモリ技術全般を担当してきた、Micron生え抜きのBrian M. Shirley氏(1988年にMicronに入社以来29年にわたってDRAM設計・開発中心に従事してきた人物)は、6月以降、DRAMおよび新規メモリ・エンジニアリング担当SVPとしてNAND以外を担当する。ここで言う新規メモリとは、Intelと協業している3D X-pontメモリやその他の次世代メモリを指す。

SanDiskや東芝の技術者もMicronへ移籍が進む

この動きがどういうことかというと、Micronは伝統あるDRAMビジネスを、生え抜き組に任せて、NANDの開発からビジネスの展開まで、Western Digital/SanDisk出身者に新たに担当させ、彼らにかつての協業相手だった東芝を打倒させるとともにトップのSamsung Electronicsに追い付く作戦へと戦略を練り直したようだ。これだけ東芝の内情を熟知したトップがMicronに結集すると、東芝にとっても脅威となろう。

しかし、Micronへの移籍はWestern Digital/SanDiskトップだけにとどまらない。

WDやSanDiskのエンジニアに話を聞くと、「東芝を買収するようなことになると、ダブってしまう回路・システム設計や開発などの人材がリストラされる」ことを心配しており、そういった人々がMicronをはじめとした他のメモリベンダに移籍し始めているという。

もう一方の話題の主である東芝のエンジニアからも同様の動きを対する声が聞こえてきている。2016年のISSCCで、3ビット/セルのフローティングゲート方式を適用した、世界最大級の容量を実現した768Gビットの3次元NAND型(3D NAND)フラッシュメモリ(読み出し速度は、800Mバイト/秒)を発表したMicronの社員は、元東芝のNAND開発担当のキーメンバーであった人物である。東芝からの移籍組が、いまやMicron本社でNAND開発の主役として活躍している例と言えるだろう。

Micronは、日本での人材採用を強化しており、積極的に日本に居るメモリ関連のエンジニアをヘッドハンティングしていると言われており、SanDiskや東芝のNANDビジネスで活躍してきた多くの人物がすでに、米国アイダホ州ボイジーにあるMicron本社に集結しているという。ちなみに、すでにDRAMの分野において、破産し、Micron子会社となったエルピーダメモリからの転籍組の日本人技術者たちがボイジーにて活躍しているといわれている。

なお、Micronは、2017年8月に2015年10月より進めてきた本社R&Dセンターの増築工事を終え、研究開発用クリーンルームを従来の2倍の広さに拡張した模様だ。また、併せて、Micron傘下のすべての半導体メモリ工場と研究開発センターとのビッグデータをやり取りする高速通信網も整備されたとのことで、ここでMicronは、次世代半導体技術、特に「微細化したDRAM」、「多層化した3D-NAND」、「高集積化した3D Xpointメモリ」の研究を強化するとしており、新たな研究者や技術者を受け入れる態勢作りに余念がないようである。

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。















2017/09/10  |  JIJI.COM(9/5)  |   40年前に打ち上げられた宇宙探査機ボイジャー、今なお続く宇宙の旅



40年前に打ち上げられた探査機ボイジャー、今なお続く宇宙の旅
https://www.jiji.com/jc/article?k=20170905036134a&g=afp


【マイアミAFP=時事】宇宙に存在する生命体はわれわれだけなのだろうか──?この問いに対する答えを見つけるため、米航空宇宙局(NASA)のロケット科学者らは40年前の9月5日、人工物として地球から最も遠く離れた場所を目指す双子の無人探査機「ボイジャー」を打ち上げた。そして2機は現在もなお、宇宙空間を飛び続けている。(写真は、NASAが公開した、無人探査機「ボイジャー」の資料画像)






 ボイジャー1号と2号は1977年、米フロリダ州ケープカナベラルから約2週間の間隔を空けて打ち上げられた。当時は太陽系内の外惑星について分かっていることが少なく、両機による宇宙の旅がどこまで続くのか、科学者らでさえほとんど想像もつかなかった。
 ボイジャー計画に参加した科学者の一人、エド・ストーン氏は、「打ち上げ時には、40年後も何かが作動し、先駆的な旅を続けているとは誰一人思っていなかった」と明かした。
 ボイジャーは、木星や天王星、海王星といった他の惑星の探査を主任務とする一方で、人類の存在を広い宇宙に知らしめる役目も任された。

 両機には宇宙人との遭遇に備えて、人類や地球上の生物に関する基本情報を収めた10億年以上の耐久性を持つ金色のレコードとプレーヤーが積み込まれている。
 レコードには、ザトウクジラの鳴き声やベートーベンの交響曲第5番、日本の尺八の音色、55言語のあいさつなどが収録されている他、中国の「万里の長城」や望遠鏡、日没、ゾウ、イルカ、空港、列車、授乳中の母親、人の性器といった画像115点もアナログ形式で保存されている。

■試練を乗り越え、未知の宇宙の姿を明らかに
 両機のうち、ボイジャー2号がまず1977年8月20日に、次いで1号が同年9月5日に打ち上げられた。複数の惑星が同方向に並ぶ、175年に1度のまれなタイミングを生かすとともに、惑星の重力を利用して燃料を最小限に抑える「スイングバイ」航法が用いられた。

 ボイジャーは予算難や1970年代当時の科学技術の限界など、スタートから多くの試練に見舞われた。プロジェクトに参加したある科学者が、ボイジャーを強い放射能から守る苦肉の策として、ケーブルに台所用のアルミホイルを巻き付けたという有名な逸話も残っている。
 それでも両機はこれまでに誰も目にしたことのない惑星の姿を次々と明らかにしていった。木星の表面に見える地球2個分の大きさを持つ巨大な渦「大赤斑」も、そうした発見の一つだった。
 また土星の衛星タイタンに太陽系で最も地球に似た大気が存在することや、海王星の衛星トリトンで極めて低温の物質が噴出していることも判明した。

&#8195・軌道上にそれ以上惑星がなくなると、天文学者のカール・セーガン氏から、カメラを反転させて同機を送り出した地球の写真を最後に撮影しておくべきだという声が上がった。これを受けてボイジャーは1990年のバレンタインデー、2月14日に、64億キロ離れた地点から撮影を実施。そこに映った地球は、広大な宇宙の中の1画素にも満たず、日光に浮かぶ微小なちりのように見えた。

■ついに太陽系の外へ
 ボイジャー1号はこれまでに造られたどの宇宙船よりも最遠の地へ到達し、2012年8月には地球から約210億キロ離れた太陽系外の星間空間に突入。また史上初めて木星・土星・天王星・海王星という4惑星すべてのそばを航行したボイジャー2号も、1号同様いずれ太陽系外に飛び出す見通しだ。
 プルトニウムの原子力電池を動力源としている両機は、電池の寿命が尽きるまで航行し、その後は天の川銀河の中心で周回を続けることになる。
 プロジェクトに関わった米カリフォルニア工科大学のアラン・カミングス上級科学研究員によると、カメラはずっと以前に機能を停止したものの、5つほどの機器は引き続き情報を収集しているという。
 ボイジャーからは今なお日報が届いており、研究者らは今後さらに10年前後はデータが得られるのでは期待している。】
〔AFP=時事〕(2017/09/05-12:07) 















2017/09/08  |  JIJI.COM(9/7)  |    大規模な太陽フレア発生=GPS、通信影響の恐れ-情報通信研究機構



大規模な太陽フレア発生=GPS、通信影響の恐れ-情報機構
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017090700965&g=soc



米国の太陽観測衛星「SDO」に搭載された紫外線望遠鏡で撮影された大規模な太陽フレア
=6日午後(NASA提供)


情報通信研究機構は7日、大規模な太陽フレア(表面の爆発現象)が観測され、全地球測位システム(GPS)や電波通信などに影響を与える可能性があるとして、注意を呼び掛けた。
〔写真特集〕超常?現象ショー

 情報機構によると、大規模フレアは6日に2回発生した。このうち午後8時53分(日本時間)に発生したフレアは、2006年12月5日以来、11年ぶりの規模という。
 機構はフレアに伴って放出された放射線や高エネルギー粒子が8日午後3時ごろ、地球に到達すると予想。到達後の数日間は、GPSの測位誤差増大や地上の電波通信の障害、人工衛星の故障などの恐れが高まるとしている。(2017/09/07-16:40)














2017/09/02  |  PCWatch  |    CFD、東芝製64層NAND採用の2.5インチSSD(240GB~)を9月中旬に発売



CFD、東芝製64層NAND採用の2.5インチSSD
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1078137.html





CFD販売株式会社は、東芝製3D NAND採用のSSD「CSSD-S6TxxxNMG3V」を9月中旬以降より発売する。価格はすべてオープンプライスで、税別店頭予想価格は12,500円前後からの見込み。

 東芝製の64層3D NANDを採用した2.5インチSSD。インターフェイスはSATA 6Gbpsで、コントローラは非公開。

 機能面ではTRIM/NCQ/WWN/GPL/HPA/SSP/LDPC/SMART/DEVSLEEPをサポートする。製品保証期間は3年。

 容量は240GB/480GB/960GBの3ラインナップで、税別店頭予想価格はそれぞれ12,500円、19,500円、45,980円前後の見込み。

 シーケンシャルリードが550MB/s、同ライト510MB/s、ランダムリードが85,000IOPS、同ライトが75,000IOPS。40GBはシーケンシャルライトが500MB/s、ランダムリードが83,000IOPS、同ライトが72,000IOPS。

 総書き込み容量は960GBが240TiBW、480GBは120TiBW、240GBは60TiBW。

















2017/08/31  |  ロイター通信  |    文科省 来年度予算で量子コンピューターに32億円 米国先行に危機感



量子コンピューター、来年度予算に32億円 米国先行に危機感
http://jp.reuters.com/article/conputer-us-japan-idJPKCN1BB16M?pageNumber=4




8月31日、次世代コンピューターの開発競争が過熱している。米IBMなどが本命とされる量子コンピューターの開発競争でリード
する一方、NTTなど日本勢は「組み合わせ最適化問題」の解決に特化したコンピューターで一足先の実用化を目指している。
写真はキーボード、2013年2月撮影(2017年 ロイター/Kacper Pempel)



[東京 31日 ロイター] - 次世代コンピューターの開発競争が過熱している。米IBM(IBM.N)などが本命とされる量子コンピューターの開発競争でリードする一方、NTT(9432.T)など日本勢は「組み合わせ最適化問題」の解決に特化したコンピューターで一足先の実用化を目指している。

だが、将来の産業社会で主導権を握るには「本命」の開発は避けて通れない。危機感を持つ文部科学省は来年度予算の概算要求に光・量子技術の推進費として32億円を盛り込んだが、欧米に比べ1ケタ少なく、研究者の間からは予算の格差を危惧する声も聞かれる。

<限界打破の決め手>

「半導体の集積密度は、18カ月で2倍になる」というコンピューターの性能向上を支えてきたムーアの法則。だが、半導体の微細化は限界に近づき、最近ではその終えんもささやかれるようになってきた。

この状況を打破する決め手として注目されているのが、量子コンピューターだ。

従来のコンピューターでは、0か1のいずれかの値をとるが、量子コンピューターは0でもあり、1でもあるという量子力学の「重ね合わせ」という概念を利用するため、複数の計算を同時にできるのが特徴だ。

基本単位は「量子ビット」と呼ばれ、量子ビットの数をnとすると、最大で「2のn乗」通りの計算を同時に行える。

量子コンピューターは、大きく2種類に分類できる。1つは「量子ゲート方式」と呼ばれるデジタル型の量子コンピューターで、もう1つが「量子アニーリングマシン」に代表されるアナログ型の量子コンピューターだ。


IBMなどは、量子ゲート方式を開発中。汎用性があるため、量子コンピューターの本命と言われているが、現在、量子ビットは十数個にとどまっており、実用化にはなお相当の時間がかかりそうだ。

ただ、仮に実用化されれば、通信暗号を短時間で読解できるようになるため、現在のセキュリティシステムの前提が覆る可能性がある。


<NTTは機能特化で勝負>

一方、量子アニーリングマシンは、イジングモデルという相互作用している多数の磁石(スピン)が自然に安定した組み合わせになる現象を利用して計算する。

量子ゲート方式とは違い、用途は組み合わせ最適化問題に限られるが、カナダのディーウェーブ・システムズが2011年に世界初の商用量子コンピューターとして売り出して注目を集めた。

組み合わせ最適化問題とは、膨大な数の選択肢の中から一番良い選択肢を見つけ出す問題で、「巡回セールスマン問題」が有名だ。

セールスマンが各都市をまわる最短経路を探すという単純な問題だが、これがそう簡単には解けない。都市数が5のときは経路は12通りしかないが、10になると18万1440通り、20になると6京0822兆通りとなる。

60都市ではなんと10の80乗通りと、観測可能な宇宙にある全原子数と同じ数まで増加する。


従来のコンピューターでは、組み合わせの数だけ計算をしなければならず、一定以上のデータ量になると計算時間が爆発的に増え、解くのは事実上不可能となる。

これに対し、多くの組み合わせ最適化問題はイジングモデルに変換できるため、この原理を用いたマシンは短時間に問題を解くことができる。

NTTが開発している「コヒーレントイジングマシン」もイジングモデルに基づいて計算しており、量子アニーリングと同じグループに属する。

「2018年度の終わりごろには、10万スピンのマシンが動いているはずだ」──。NTT物性科学基礎研究所量子光制御研究グループの武居弘樹上席特別研究員はこう話し、現行モデルの50倍のスピン数を持つ次世代コンピューターの開発に自信を示した。

スピンは量子ビットに相当し、増えれば増えるほど、より大規模な問題を扱えるようになる。

組み合わせ最適化問題は、交通網や電力送電網の最適化、周波チャネルの効率的な割り当て、投資ポートフォリオの最適化、創薬など、幅広い分野への応用が期待されている。


<動き出した文科省>

文科省は概算要求で光・量子技術の推進に32億円を計上した。予算をつけるのは現在、日本の民間企業が取り組んでいる次世代コンピューターではなく、本命とされる汎用量子コンピューターにつながる技術だ。


文部科学省の担当者は「今後5─10年では、ゲート方式につながる技術として量子シミュレーターの開発を後押ししていく。量子アニーリングは技術開発がだいぶ進んでおり、基礎研究を支援する段階ではない」と話す。

超伝導量子ビットや量子アニーリングなど、量子コンピューターの要素技術は日本の研究者から生まれたにもかかわらず、量子ビットの集積化では欧米に後れをとっている日本。

文科省担当者は「世界的に量子コンピューターへの投資が拡大しており、いま投資しないとせっかく優位性があるのに置いていかれてしまう」と危機感を示したが、米国では国防省などが毎年2億ドル(約220億円)をつぎ込んでいるほか、欧州連合(EU)も2019年から10年間に10億ユーロ(約1300億円)を投資する予定だ。

研究者からは「日本は基礎研究は健闘しているが、マシンの開発競争は北米優位。予算規模の差が効いているのかもしれない」との声が聞かれた。

*カテゴリーを変更しました。

(志田義寧 編集:田巻一彦)















2017/08/20  |  産経ニュース(8/18)  |   【日本版GPS衛星】準天頂衛星みちびき3号機、打ち上げ成功 地上の位置を高精度に測定へ



【日本版GPS衛星】
準天頂衛星みちびき3号機、打ち上げ成功 地上の位置を高精度に測定へ
http://www.sankei.com/life/news/170819/lif1708190020-n1.html


            

人工衛星みちびき3号機を搭載して打ち上げられるH2Aロケット35号機。                     「みちびき3号機」を載せたH2Aロケット35号機=19日午前10時2分、鹿児島県の種子島宇宙センター
上昇するロケットの周囲に筒状の雲ができた=19日午後2時29分、



日本版の衛星利用測位システム(GPS)を担う政府の準天頂衛星みちびき3号機を載せたH2Aロケット35号機が19日午後2時29分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。衛星を予定の軌道に投入し、打ち上げは成功した。

 みちびきは6月の2号機に続くもので、秋に4号機を打ち上げ、来年度から地上の位置を高精度に測定できる4基体制で本格運用を開始する。

 3号機はロケットの不具合などで打ち上げが2回延期されていた。

 他の3基が日本のほぼ真上(準天頂)に長時間とどまる特殊な軌道を飛行するのに対し、3号機は赤道上空の静止軌道を飛行する。衛星の場所を分散し、測定精度を高めるためだ。

 災害時に被災者の安否や避難所の状況を防災機関に伝える機能も装備。航空機が飛行位置を正確に把握するため、GPSの誤差を補正する信号も出す。

 米国が開発したGPSは日本でもカーナビゲーションやスマートフォンなどで広く利用されているが、位置情報の誤差が10メートルと大きい。みちびき4基を併用すると誤差を最小6センチに抑えられる。

 高精度の位置情報は車の自動運転の実用化に大きな役割を果たすほか、農作業や物流などの効率化につながると期待されている。平成35年度には7基体制とし、GPSに依存しなくても誤差6センチを実現する。H2Aロケットは29回連続の成功となった。











2017/08/07  |  産経ニュース  |     「呼吸しない微生物」を発見 どのようにして生きているのか不明…生命誕生の謎に手掛かり



「呼吸しない微生物」を発見 どのようにして生きているのか不明…生命誕生の謎に手掛かり
http://www.sankei.com/life/news/170807/lif1708070005-n1.html






呼吸する仕組みを持たず、どのようにして生きているのか分からない常識外れの微生物を発見したと海洋研究開発機構などの国際チームが発表した。

 生命誕生の謎の解明につながる可能性があるという。英科学誌電子版に発表した。

 チームは米カリフォルニア州の山で、地下深部からの湧き水に含まれる微生物を採取。ゲノム(全遺伝情報)を調べたところ、16種類の微生物は呼吸をつかさどる遺伝子がなかった。うち4種類は体内でエネルギーを生産するための遺伝子も見当たらなかった。これらが生命を維持する仕組みは全く分からないという。

 この湧き水は、地球のマントルの成分のかんらん岩と水が反応してできた。強いアルカリ性で酸素をほとんど含まず、生命にとって極めて厳しい環境だ。

 生命が誕生した約40億年前の地球は、よく似た環境だったとされる。










2017/07/29  |  日本工業新聞  |     再使用型有翼ロケット、九州工大・IHI・JAXA・川重などが連携、実験機を打ち上げへ



「宇宙航空機」実用化の試金石?九州工大・IHIなど、再使用ロケット打ち上げ
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00437372






九州工業大学は宇宙航空研究開発機構(JAXA)やIHIなどと連携し、2018年度にも液化天然ガス(LNG)燃料エンジンを搭載した再使用型有翼ロケット実験機を米国で打ち上げる。機体には複合材を採用。全長4・6メートル、重さ1トン程度を想定し、打ち上げコストを1億円以内とする計画だ。繰り返し使えるスペースプレーン(宇宙航空機)の実用化に向けた試金石となり、民間主導の宇宙分野の開発、利用促進に貢献しそうだ。

九州工大の米本浩一教授らの研究グループを中心に、IHI、川崎重工業、東レ・カーボンマジック(滋賀県米原市)、中国工業(広島市中区)などがコンソーシアムを組み機体を開発する。18年春に予備機の飛行試験を実施し、19年3月にも誘導制御した形で実験機を打ち上げる。

今回の試験では高度6キロメートル程度までにとどめる。将来は同100キロメートル超を目指す。

搭載するLNGエンジンはJAXAからの委託を受けてIHI、IHIエアロスペース(IA、東京都江東区)が開発する。エンジンは真空推力3トン級。IA相生試験場(兵庫県相生市)で今秋にも中核部品のターボポンプの試験を実施し、17年度内には燃焼試験を実施する予定だ。

ターボポンプのうち、耐圧、気密が要求される構造部材や流路形状が重要な翼部品などは3Dプリンターで製作する方針だ。機体への搭載に当たり、IHI、IAはJAXAとの契約に基づき技術支援役務を提供する。

再使用ロケットの打ち上げは、米スペースXが成功させるなど米国が先行する。国内官需が約9割を占める日本の宇宙機器産業においても、新たなプレーヤーの創出が産業振興のカギを握っている。











2017/07/19  |  EETimes(6/28)  |    東芝がQLCの3D NANDを試作、96層プロセスの開発も



東芝がQLCの3D NANDを試作、96層プロセスの開発も
http://eetimes.jp/ee/articles/1706/28/news093.html


東芝メモリは、同社の3D NAND型フラッシュメモリ「BiCS FLASH」について、4ビット/セル(QLC)技術を用いた試作品と、96層積層プロセスを用いた試作品を開発し、基本性能を確認したと発表した。
[村尾麻悠子,EE Times Japan]

QLCの3D NANDフラッシュ、容量1.5Tバイトのパッケージ品も




東芝メモリは2017年6月28日、4ビット/セル(QLC:Quad Level Cell)技術を用いた3D(3次元) NAND型フラッシュメモリ「BiCS FLASH」を試作し、基本動作と基本性能を確認したと発表した。QLCを用いることで、従来の3ビット/セル(TLC:Triple Level Cell)を用いたBiCS FLASHに比べてさらなる大容量のメモリを実現できる。QLCを用いた3D NANDフラッシュは「世界初」(同社)とする。

 試作したQLC BiCS FLASHは、64層で、768Gビット(96Gバイト)という大容量を実現している。2017年6月上旬から、開発向けにSSDメーカーやメモリ制御ICメーカーに提供しているという。

 さらに、768Gビットのチップを1パッケージ内に16段積層し、1.5Tバイトの容量を実現した製品を、2017年8月からサンプル出荷する予定だ。なお、この製品は米国カリフォルニア州サンタクララで開催される「Flash Memory Summit 2017」(2017年8月7~10日)で参考展示する。

96層積層プロセスでBiCS FLASHを試作

 東芝メモリは同日、BiCS FLASHの96層積層プロセスを適用した製品を試作し、基本動作を確認したことも発表した。こちらは、256Gビット(32Gバイト)のTLCで、2017年後半にサンプル出荷を、2018年に量産出荷を開始する予定だ。データセンター向けエンタープライズSSD、PC向けSSD、スマートフォン、タブレット、メモリカードなどを主な用途とする。

 試作品は、回路技術とプロセスを最適化してチップサイズを小型化した。64層のBiCS FLASHに比べて、単位面積当たりのメモリ容量が約1.4倍になった。さらに、小型化したことから、ビット当たりのコストも低減した。なお、64層のBiCS FLASHは、512Gビット(64Gバイト)容量のサンプル出荷を、2017年2月に開始している(関連記事:東芝、64層 512Gbの3D NANDをサンプル出荷開始)。

 今後は、96層積層プロセスを用いた512Gビット品の製品化も計画している。96層のBiCS FLASHは、四日市工場(三重県四日市市)の第5棟、新・第2製造棟、2018年夏に第1期が完了する予定の第6製造棟で製造する予定だ。

 なお、東芝メモリについては、同社の売却をめぐり東芝とWestern Digital(ウエスタン・デジタル)の泥仕合が続いている(関連記事:東芝がWDを提訴、妨害差し止めと損害賠償を求める)。














2017/07/04  |  マイナビニュース  |   ISC2017 - 富士通のAIエンジン「Deep Learning Unit(DLU)」



1 富士通のディープラーニング専用AIプロセッサ「DLU」を読み解く
http://news.mynavi.jp/articles/2017/07/04/dlu/


Hisa Ando

富士通は2016年11月に同社のAIサービスの一環として、「スーパーコンピュータ「京」で培ったプロセッサ開発技術と先端のCMOSテクノロジーを採用した、独自のディープラーニング専用AIプロセッサ『DLU(Deep Learning Unit)』の開発を進め、2018年度からの出荷開始を目指す」という発表を行った。

しかし、DLUがどのようなものであるかは、競合製品と比べて10倍の性能/電力を目指すということしか述べられておらず、謎に包まれていた。

このDLUについて、フランクフルトで開催されたISC2017において、富士通のAI基盤事業本部シニアディレクターの丸山拓巳氏が発表を行い、その概要が明らかにされた。ここでは、丸山氏の発表をもとに富士通のDLUがどうなっているのかを見て行きたい。

アーキテクチャ的にはDLU(Deep Learning Unit)は、ディープラーニングに特化した設計になっている。この点では、GoogleのTPUなどと同じ考え方のプロセサである。

そして、演算精度を最適化することで、競合製品と比較して10倍の性能/電力を目指す。また、京コンピュータで開発したTofuインタコネクトの技術を使って大規模なニューラルネットの処理ができるスケーラブルな設計とするという。





丸山氏は、ディープラーニングの処理を効率よく実行し、高い性能/電力を実現するには、従来のスーパーコンピュータ(スパコン)やGPUのようなアーキテクチャでは不十分で、専用のアーキテクチャのハードウェアを開発することが必要になるという。これは、GoogleのTPU開発チームと意見が一致している。






従来の汎用コンピュータでは、複雑なOut-of-Order実行や倍精度浮動小数点演算などを行って性能を上げているが、ディープラーニング用のプロセサでは、用途に最適化したドメイン特化型のプロセサコアを使い、必要な演算精度を最適化する。そして、超多数の専用コアをチップに搭載し、オンチップのネットワークで結合したアーキテクチャが最適であるという。






DLUは多数の演算器からなるDPU(Deep learning Processing Unit)を多数集積し、それにホストCPUとのインタフェースと他のDLUと接続するチップ間インタフェース、3次元積層技術を使うHBM2高バンド幅DRAMメモリから構成されている。なお、HBM2はコンパクトで高いメモリバンド幅が得られるので、NVIDIAのPascal/Volta GPUやAMDのRadeon Instinct GPUでも使われている。

DLUは大容量のレジスタファイルを持つ演算ユニットが直接HBM2メモリに繋がっているというメモリ階層とみられる。重みは再利用されないので、キャッシュやローカルメモリは持っても役に立たないという設計である。

後に掲載した図に見られるように、DPE(Deep learning Processing Element)は8並列のSIMD演算器を持ち、DPUは16個のDPEを次の図の青線のリンクでリング状に接続している。また、赤線のリングでDPUをリング状に接続しており、DPEは全体として、2次元のトーラス接続になっているのではないかと思われる。

DLUは、チップ間接続インタフェースを持ち、3次元トーラスの大規模DLUネットワークを構成することができるというスケーラブルな設計になっている。GoogleのクラウドTPU(第2世代のTPU)やNVIDIAのV100 GPUなどは、大規模ネットワークを構成する機能は持っておらず、この点は、富士通のDLUが先行するディープラーニング用のチップに対して優れている点であると言える。





前の図には明示的に描かれていないが、Masterと呼ばれる大型のプロセサコアがあり、それが小形のディープラーニング用コアであるDPUを制御するという構造になっている。マスタコアは、メモリのアクセスとDPUに命令とデータを供給し、実際の演算は多数のDPUが並列に実行する。

この図でもMasterとDPU群を含むプレーンが4枚重なっているように描かれており、DLUは大きく4つに分けられて実装されていると思われる。

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。



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2 どうなる? ディープラーニングの演算処理の進化の方向性
http://news.mynavi.jp/articles/2017/07/04/dlu/001.html

Hisa Ando

畳み込みネットワークの場合は、1つのニューロン(ノード)が1つのDPUに対応し、1つのDPUは多数のバッチを処理すると書かれている。DLUチップに集積されるDPUの数は公表されていないが、せいぜい1000個程度と考えられ、現在のニューラルネットを構成するのに必要なニューロンの数には遠く及ばない。したがって、1つのDPUはたくさんの処理バッチを切り替えながら処理して、たくさんのニューロンの処理を行う必要があると考えられる。





DPEは8個の演算を並列に実行するSIMD演算器と大きなレジスタファイルからなっている。それぞれのDPUはたくさんのニューロンの処理を行う必要があるので、それらのニューロンの入力の重みを記憶しておく必要がある。このため、汎用プロセサと比較すると~100倍という巨大なレジスタファイルが必要となっていると思われる。

巨大なレジスタファイルを持ったとしても、全部の重みを保持することはできず、HBM2からレジスタファイルへのデータ転送が避けられない。HBMからレジスタファイルへのデータ転送バンド幅が性能リミットになる可能性があるが、この発表では、この部分の詳細は説明されておらず、どのようになっているのかは分からない。

なお、16個のDPEは単方向のリング接続であり、前の層の処理結果を次の層の入力に送るというディープラーニングの処理をエネルギー効率よく実行できるのではないかと思われる。





DLUは、FP32、FP16×2、INT16×2、INT8×4の形式のデータを扱うことができるようになっている。特に、INT8、INT16データを入力とする場合は、積項の和を求めるときには、入力よりビット数の多いアキュムレータを使っている。

このようにアキュムレータのビット数を増やすことにより、次の図で赤い破線の矢印で示すように実効的な計算精度が向上し、FP32での計算には及ばないが、ディープラーニングに必要とされる程度の計算精度が得られるようになるという。富士通は、このような計算法を「ディープラーニング整数」と呼んでいる。

INT8やINT16のような整数で計算を行うことにより、FP32での計算に比べると、演算に必要なエネルギーは小さくなる。なお、DPEが8並列SIMDというのはFP32の場合で、INT16では16SIMD、INT8では32SIMDとなり、演算/電力は2倍、4倍以上に向上する。これにより、FP32での計算に比べて10倍の演算性能/Wを実現するというのは可能性があると思うが、他社も、このようなアキュムレータの拡張は行っており、競合製品と比較して10倍の性能/電力が達成できるかどうかは難しいところがありそうである。





次の図は、横軸が学習の回数、縦軸が認識率を表している。左の図はLeNetで手書き文字の認識の学習を行ったケースで、FP32で計算した場合に比べて、INT16+長いアキュムレータでの計算でも認識率にはほとんど差がない。一方、INT8+長いアキュムレータでの計算では5,000回まではうまく行っているのに、10,000回学習させると大幅に認識率が下がっている。

右の図はVGG16風のネットで、ImageNetの一部の画像の認識の学習を行った場合で、長いアキュムレータを使えば、かなりうまく行っている。しかし、この図には5本の折れ線グラフがあるが、4つしか条件が書かれておらず、折れ線と条件の対応が良く分からない。ということで、筆者の解釈が正しいかどうか分からないが、10,000回の学習の結果では、FP32に比べてINT16+長いアキュムレータの認識率は若干低いように思われる。

Googleの初代TPUではINT8で演算を行い、推論専用であったが、第2世代のクラウドTPUではFP16で演算を行い学習にも使えるチップとした。NVIDIAのVoltaもFP16で計算するTensor Coreを搭載したということで、先行する2社は、学習にはFP16を使うということで一致しており、INT16+長いアキュムレータで対抗できるかどうかには不安が残ると思われる。






そして、富士通は、この第1世代のDLUに続いて、第2世代以降も開発を継続する考えである。第1世代はホストCPUを必要とするが、第2世代ではホストCPUをDLUに内蔵する計画である。さらに将来は、本物の神経回路に近い動きをするニューロモルフィックなプロセサや組み合わせ最適化を行う専用プロセサの開発なども視野に入れている。





結果として、富士通のプロセサ開発は、汎用サーバ向けのSPARC64、スーパーコンピュータ向けのSPARC64 fxシリーズにディープラーニング用のDLUが加わることになる。スーパーコンピュータ向けとディープラーニング向けは要件が大きく異なるので、別個のアーキテクチャのプロセサの開発が必要になると見ている。





なお、先行するGoogleは、ディープラーニングに特化した専用のプロセサを開発する構えで、富士通の路線に近い。一方、NVIDIAはVolta V100はTensor Coreを搭載してディープラーニング性能を引き上げるのと同時に、科学技術計算で主流のFP64の演算性能も約40%引き上げるという2正面作戦で1つの製品で両方をカバーするという路線であり、どちらが主流になるのか興味深いところである。

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください






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2017/06/30  |  マイナビニュース  |   東芝メモリ、4ビット/セル(QLC)技術を用いた3次元フラッシュメモリ 8月からサンプル出荷


東芝メモリ、4ビット/セル(QLC)技術を用いた3次元フラッシュメモリ
http://news.mynavi.jp/news/2017/06/30/125/


東芝メモリは6月28日、4ビット/セル(QLC)技術を用いた3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH」を試作し、基本動作および基本性能を確認したことを発表した。QLCは従来の3ビット/セル(TLC)と比較し、更なる大容量のメモリ製品が実現可能となる。本製品は8月に米国サンタクララで開催される「Flash Memory Summit 2017」で参考展示するという。

フラッシュメモリは、メモリセルに蓄える電子の数を制御することでデータを記憶するもの。QLCフラッシュメモリはTLCフラッシュメモリと比較して、蓄える電子の数を2倍の精度で制御することにより、1つのメモリセルに記憶されるビット数が1ビット増える。先進的な制御回路技術を64層の3次元フラッシュメモリプロセスに組み合わせることで高精度の制御を可能にした。

試作品は64層積層プロセスを用いて768ギガビッチ(96ギガバイト)の業界最大容量を実現し、6月上旬から開発用にSSDメーカーやコントローラーメーカーに提供している。

また、768ギガビットのチップをひとつのパッケージ内に16段積層することにより、業界最大容量の1.5テラバイトを実現するパッケージ製品を2017年8月からサンプル出荷する予定だ。

同社は既に、64層積層プロセスを用いたTLC製品を量産し、生産拡大を進めている。今後も継続してメモリの大容量化や小型化などの多様な市場のニーズに応え3次元フラッシュメモリをさらに進化させていく考えだ。







  2017/06/27 |   朝日新聞   |   真似をするべきか??梨畑でクマに襲われ…鉄パイプで撃退 兵庫の男性軽傷



梨畑でクマに襲われ…鉄パイプで反撃 兵庫の男性軽傷
http://www.asahi.com/articles/ASK6W3HC1K6WPIHB007.html?iref=comtop_8_04



27日午前6時半ごろ、兵庫県新温泉町竹田の梨畑で、近くに住む農業の男性(83)がクマに襲われ、顔や右腕に1週間の軽傷を負った。県警によると、22日に周辺でクマの目撃情報があったため、男性が用心のために持参していた鉄パイプで反撃したところ、クマは逃げたという。

特集:クマ出没
 美方署によると、男性が山中にある梨畑の見回りに訪れた際、梨の木の上にいたクマと遭遇。木から下りたクマに襲われた。クマは体長1・3メートルほどだったといい、現場の東や南に数百メートル離れたところには民家が点在しているという。










2017/06/18 |  PCwatch(5/17)  |    破綻危機の東芝に、5-6年先後??実現可能か!?
                                          3D NANDフラッシュは200層クラスの超高層化で2Tbitの超々大容量へ




3D NANDフラッシュは200層クラスの超高層化で2Tbitの超々大容量へ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1059981.html


~国際メモリワークショップ(IMW) 2017レポート

  福田 昭2017年5月17日 12:23






 3D NANDフラッシュ(3次元構造のNANDフラッシュメモリ)の大容量化が、一段と進展する可能性が見えてきた。米国カリフォルニア州モントレーで開催中の国際学会「国際メモリワークショップ(2017 IEEE 9th International Memory Workshop(IMW 2017))」のチュートリアルで2017年5月14日に、3D NANDフラッシュの記憶容量をさらに拡大する展望が示されたのだ。

 今年(2017年)2月の時点で、3D NANDフラッシュ技術によるシリコンダイ当たりの最大容量は512Gbit(64GB)に達していた。メモリセル(具体的にはワード線層)の積層数を64層に増やすとともに、従来と同様にTLC(1個のメモリセルに3bitを格納する)方式を導入した結果、実用的な大きさで512Gbitを収容可能なシリコンダイが開発された。

 具体的には、東芝とWestern Digitalの共同開発グループと、Samsung Electronicsがそれぞれ、64層の3D NANDフラッシュ技術による512Gbitの大容量シングルダイを国際学会ISSCCで2017 年2月に発表した(記事64層の3D NAND技術で512Gbitの大容量データをシングルダイに収容参照)。シリコンダイの面積はそれぞれ、132平方mmと128.5平方mmである。ほぼ同じ大きさであるとともに、量産可能な大きさだと言える。


200層の「超高層ビルディング」を建設する技術

 3D NANDフラッシュの記憶容量拡大は、メモリセルの積層数を増やすことで主に実現されてきた。試作発表レベルで見ると、16層で16Gbit(2009年)、24層で128Gbit(2013年)、32層で128Gbit(2014年)、48層で256Gbit(2015年)、64層で512Gbit(2016年)とシリコンダイ当たりの記憶容量を急激に拡大してきた。層数の多さだけで言えば、72層の3D NANDフラッシュの開発発表(記憶容量は256Gbit、2017年4月)がある。

 ここで重要なのは今後、積層数をどこまで増やせるかだ。IMW 2017のチュートリアルで東芝は3D NANDフラッシュ技術を解説し、メモリセルの積層数を200層前後にまで増やせるとの展望を示した。

 3D NANDフラッシュ技術のもっとも重要な点は、メモリセルアレイのエッチングと薄膜形成を一括して実施する製造プロセスにある。ワード線層と絶縁層を積み重ねてから、リソグラフィ技術とエッチング技術によってすべての層を貫く細長い孔をエリアアレイ(2次元マトリクス)状に一気に形成する。そして細長い孔の側壁に電荷蓄積層(チャージトラップ層)やチャンネル層などの薄膜をまとめて作製していく。この一括製造プロセスを「パンチ・アンド・プラグ(Punch and Plug)」、あるいは「メモリ・ホール・プロセス(Memory Hole Process)」と東芝は呼んでいる。







パンチ・アンド・プラグ技術によって一括して製造可能な積層数を増やすと、シリコンダイの単位面積当たりのメモリセル数が増え、したがって記憶密度が上昇し、製造コストをそれほど増やさずに、記憶容量を拡大できる。3D NANDフラッシュが圧倒的なコスト低減能力と記憶容量拡大能力を兼ね備える理由はここにある。

 だだし、1回のリソグラフィとエッチングによって開けられる孔の深さと、細長い孔の側壁に均一に薄膜を形成する技術には限界がある。しかも、孔を深くすると機械的な応力によってメモリセルアレイの高層ビルディング構造が変形する恐れが高まる。

 これらの問題を回避するために、パンチ・アンド・プラグ、あるいはメモリ・ホール・プロセスの繰り返しによってメモリセルの積層数を増やす。1回のプロセスで形成するメモリセルアレイを「スタック(Stack)」と呼び、複数のスタックを重ねることでメモリセルの積層数を一気に伸ばしていく。講演では、2個~4個のスタックによって200層前後が実現可能だと述べていた。







1.5Tbitのシリコンダイと96TBのSSDが見えてくる

 ここでスタックの層数を64層、3個のスタックを重ねると仮定しよう。するとメモリセルの積層数は合計で192層となる。200層弱である。

 メモリセルの積層数が64層の3D NANDフラッシュ技術によって現在、512Gbit(64GB)のシリコンダイを製造できている。そしてこのシリコンダイを使って32TBの超大容量SSD(Solid State Drive)が開発されている。3個のスタックにより、単純計算では記憶容量は3倍になる。

 するとシリコンダイ当たりの記憶容量は1,536Gbit(192GB)となり、ワンチップで1.5Tbitの超々大容量NANDフラッシュメモリが実現可能となる。またSSDの記憶容量は、同じフォームファクタで96TBに達する。








さらに付け加えると、メモリセルの積層数と3Dフラッシュの記憶容量は必ずしも、比例関係にあるわけではない。これまでの開発事例からわかるように、32層から64層へと積層数が2倍に増えると記憶容量は128Gbitから512Gbitへと4倍に増えている。これは積層数を単純に増やすだけではなく、ほかにもシリコンダイ面積を節約するための技術開発がなされていることを意味する。この開発努力を加味すると、先程の記憶容量「3倍」という予想は弱すぎる。実際には「4倍以上」、つまり、2,048Gbit(2Tbit)以上をシングルダイに収容すると予想すべきだ。

 つまり、3D NANDフラッシュの記憶容量拡大トレンドは、「128層で1Tbit以上」、「192層で2Tbit以上」、となる。192層を実現することは、製造技術としてはとてつもなく難しい。難しいが不可能ではない。不可能ではないということは、リソースをつぎ込めれば、なんとかなるということを意味する。

 幸いなことに、NANDフラッシュメモリ事業はすでに毎年、膨大なキャッシュを産み出している。近い将来に、シングルダイが2Tbit(256GB)という超々大容量のNANDフラッシュメモリが実現する可能性は低くない。













2017/05/24 | 日本経済新聞 |   googleのAI囲碁ソフトが驚異の進化 中国の世界最強棋士・柯潔(カ・ケツ)九段に第1局で完勝・・・
                              柯潔「弱み見つからず」




AI囲碁、驚異の進化 最強棋士「弱み見つからず」
第1局で圧倒



【烏鎮(浙江省)=山川公生、小川義也】米グーグルが囲碁用に開発した人工知能(AI)「アルファ碁」と、世界最強とされる中国の柯潔(カ・ケツ)九段との3番勝負が上海近郊の烏鎮で23日始まり、第1局をアルファ碁が制した。最も難しいとされる知的ゲームの囲碁で、AIの実力が人間を上回ったことが示された。



囲碁ソフト「アルファ碁」との初戦に臨む中国人棋士、柯潔九段(左)=23日、中国浙江省烏鎮(共同)



 今回の対局はグーグルが中国政府などの協力で開いた「囲碁の未来サミット」の目玉。この対局では柯九段が序盤にポイントを稼ぐ戦術を採ったが、大局観に優れたアルファ碁が優勢を築くと、危なげなく押し切った。

 柯九段は中国ランキング1位の世界最強棋士で、19歳。アルファ碁は昨年3月、韓国の強豪棋士を破って話題を呼んだ。

 「完敗だった。アルファ碁の弱みを見つけられなかった。人間との差を一個人で補うことはできないようになる」。対局後の記者会見で柯九段は苦笑いを浮かべながらこう語った。

 囲碁は局面の数が「10の360乗」に達し、難易度がチェス、将棋をはるかに上回る。人間に勝つのは「あと10年はかかる」とされていた。だが、2014年に開発が始まったアルファ碁は昨年3月、下馬評を覆し、韓国の強豪、李世●(石の下に乙、イ・セドル)九段に圧勝した。

 1年ぶりに大勝負の舞台に戻ってきたアルファ碁は、驚異的な速さで進化し続け、柯九段との対戦でも異次元の強さを見せつけた。

 開発したグーグル傘下の英ディープマインドは李九段に勝利した直後から、状況分析や打ち手を決めるソフトの改良に着手。グーグルが自ら設計した最新のAI用半導体「クラウドTPU」を採用し、計算能力などハード面の性能も大幅に強化した。李九段との戦いに比べても「読みがさらに深くなり、大局観に磨きがかかった」。囲碁AIに詳しい王銘?九段は舌を巻く。

 圧倒的な強さの秘密は、人間の脳をまねた「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる情報処理手法にある。過去に打たれた対局の棋譜をもとに打つ手の善しあしを自ら学習することに加え、進化したアルファ碁は、膨大な数の自己対局を重ねる「強化学習」の比率を拡大。自らの勝ち負けの経験から、判断力を磨いた。

 こうした深層学習は、自動運転車の開発に欠かせない画像認識技術や、会話型AIの普及を可能にした音声認識技術の精度向上などにも大いに貢献している。

 ディープマインドのデミス・ハサビス最高経営責任者(CEO)は対局前のあいさつで、「アルファ碁を動かしているAI技術は汎用性が高い」と述べ、難病の治療法の発見やエネルギー問題の解決、環境保全などへの応用に意欲を示した。

 世界最強棋士でもAIに歯が立たなかったことについて、囲碁界には落胆ムードが漂う。だが、ハサビス氏は「どちらが勝っても、人間の勝利であることは違いない」と強調する。柯九段は「今日の試合には不満がある。どんなに努力しても(勝ちに)届かないこともあるが、残りの試合にも全力を尽くす」と挽回を誓った。






2017/05/19 | YOMIURIONLINE  |  世界で150か国・30万件以上の被害をあたえたランサムウェア「WannaCry」流行の理由 



ランサムウェア「WannaCry」流行の理由
http://www.yomiuri.co.jp/science/goshinjyutsu/20170519-OYT8T50016.html



世界中を驚かせたランサムウェア「WannaCry(ワナクライ)」。一気に大流行した理由は、インターネットやLAN経由で広がる「ワーム=虫」だったためだ。虫のように自己複製して広がるランサムウェアについて、セキュリティー各社の分析をまとめる。(ITジャーナリスト・三上洋)

日本で600か所・2000端末以上、世界で150か国・30万件以上の被害




  ランサムウェア・WannaCryの脅迫画面。日本語で元に戻すには300ドルを
  払えと脅している(トレンドマイクロによる)


時多発のランサムウェア(身代金要求型ウイルス)としては史上最大の流行となった「WannaCry(ワナクライ)」。「WannaCry」とは「I wanna cry」、つまり「泣きたくなる」といった意味だろう。

 まさに泣きたくなるような被害が世界で広がった。日本では日立製作所、川崎市上下水道局、JR東日本高崎支社など600か所・2000端末以上が感染した(件数はJPCERT/CCによる)。全世界では150か国にも及び、30万件以上の被害が出ていると推測されている(米ホワイトハウス発表)。

 ランサムウェアとは、感染するとファイルを読めなくしたり、パソコンやスマホを起動できなくしたりして「戻すには金を払え」と脅すウイルスのこと。日本では2016年にパソコン・スマホで大きな被害が出ていた(2016年の10大事件に偽ポケモンGO、ランサムウェア:サイバー護身術)。

 上は今回のランサムウェア「WannaCry(ワナクライ)」の脅迫画面だ。日本語でファイルを暗号化したこと、戻すためには金を払え、7日以内に払わないと戻せない、などの脅迫文が書かれている。左側には、期限までのカウントダウンタイマー、下側にはビットコイン(仮想通貨)での支払い画面がある。ランサムウェアの典型的な脅迫画面だが、28か国語に対応しており、感染したパソコンの言語に合わせて脅迫文を出すようになっている(参考記事:ランサムウェア「WannaCry」実際に感染してみた-対策もチェック)

 今回のランサムウェアの最大の特徴は、一気に大流行したことだ。被害が出始めたのは、日本時間で5月12日金曜日の夜。翌日には世界中で感染が報告され、週明けの15日月曜日には日本でも多数の被害がみつかっている。これほど一気に同時多発で流行したランサムウェアは初めてと言っていいだろう。
セキュリティー各社の「WannaCry」分析。「ワーム」「脆弱性」「ビットコイン」

 同時多発の理由は、インターネット経由で感染を広げる「ワーム」だったからだ。セキュリティー各社の分析をトピックスとしてまとめておく。

●「暗号化・身代金要求」と「感染拡大」の2つの部品で作られていた

 WannaCryには、ランサムウェアの機能としての「暗号化・身代金要求」と、被害を広げるための「感染拡大」の2つのモジュールがあった(マルウェア解析奮闘記 WannaCryの解析:マクニカネットワークス)。

 今までのランサムウェアでは感染拡大機能はない場合が多く、感染を広げるにはメール添付ファイルや改ざんされたウェブサイトを使っていた。それに対しWannaCryには、自ら感染を広げる機能があった。WannaCryは複数のファイルで活動しており、三井物産セキュアディレクションが詳しい分析を出している(「WannaCry 2.0」の内部構造を紐解く)

●インターネットで感染先を探し自己複製する「ワーム」

 WannaCryは「ワーム」だった。ワーム(worm)とはミミズなど細長い虫のことで、コンピューターの世界では「自己複製して拡散するウイルス」のことを言う。つまりWannaCryはインターネットや社内LAN・家庭内LANを通じて、虫のように広がっていく感染機能を持っている。

 ワームは昔からあるウイルスの一種であるが、セキュリティー対策が進むにつれ少なくなっていた。最近の大流行は2008年の「DOWNAD(ダウンアド)」「Conficker(コンフィッカー)」であり、9年ぶりの大流行になる。

●Windowsの脆弱性=弱点を狙って感染拡大

 WannaCryは、Windowsにある脆弱性(攻撃されるとマルウェアの感染の原因ともなる穴・欠陥)を利用して感染を広げる。具体的にはマイクロソフトが3月に出したアップデート「MS17-010」に含まれる脆弱性を利用している。この脆弱性はパソコン間のファイル共有やプリンター共有などのしくみにあるものだ(ランサムウェアWannaCryに関するさらなる分析:マカフィー)。

「バックドア(裏口)」ツールを利用して侵入

 具体的な侵入方法は、トレンドマイクロが「ランサムウェア「WannaCry/Wcry」のワーム活動を解析:侵入/拡散手法に迫る」で解析している。それによると、上記の脆弱性を突いて秘密裏に裏口(バックドア)を作るツール「DoublePulsar(ダブルパルサー)」を利用して侵入する。

 この「DoublePulsar」はアメリカのNSA(国家安全保障局)からの流出情報に含まれていたと言われるもので、4月にハッカー集団によって公開されていた。犯人はこれを利用し、WannaCryの感染拡大機能に組み込んでいる形だ。

ネット経由で感染するのは特殊な条件。ただし日本でも2万件以上ある?



Windowsの脆弱性が残ったまま(MS17-010を適用していない)で、かつポート(インターネットの接続窓口)445番が開いているパソコン・サーバーに侵入する。かなり特殊な条件であり、家庭用ルーターでネット接続している一般ユーザー、ファイアウォールが有効な企業であれば感染することはないと思われる。しかしトレンドマイクロの調べによれば、ポート445番が開いているものは、5月18日現在で「日本で約3万件、世界で50万件以上」があるとのこと。このうちWannaCryに感染する可能性のある脆弱性が残っているものが、7割以上を占めると報告されている。日本だけで2万件以上が感染の可能性があることになる。(ランサムウェア「WannaCry/Wcry」のワーム活動を解析:侵入/拡散手法に迫る:トレンドマイクロ)

●通信モジュール内蔵のノートパソコンの持ち込みで感染も?

 ノートパソコンを外で利用した時に感染し、そのPCを社内LANなどに接続することでの感染拡大も疑われている(ランサムウエア "WannaCrypt" に関する注意喚起:JPCERT/CC)。ノートパソコンの一部で通信モジュールを内蔵して直接ネット接続できるものがあり、上記の条件にあてはまると感染する可能性があるとのことだ(モバイルルーター利用やスマホのテザリングであれば大丈夫だと思われる)。

感染が止まった理由は「キルスイッチ」があったから

 WannaCryの感染は週末に拡大したものの、15日月曜日以降は落ち着いているようだ。理由はWannaCry自体に「キルスイッチ」と呼ばれる停止機能があるため。特定のドメイン(インターネット上の住所)にアクセスし、そのドメインが生きていると動きを止める機能だ。セキュリティー関係者によって、そのドメインが有効化されたため、流行のスピードは落ちた(WannaCry:情報まとめ:カスペルスキー)。犯人がキルスイッチを入れた理由についてカスペルスキーは、「セキュリティー会社などによる解析を避けるため(解析に使う仮想環境ではインターネット接続していなくても接続しているかのように見せかける)」などの理由ではないかと推測している。

身代金の支払額は約1000万円・300件強




WannaCryでは身代金をビットコイン(ネット上で使われる電子通貨)で要求している。しかし入金されるビットコインの口座は3つしか確認されておらず、この口座を見ると支払われた身代金の総額がわかってしまう(ランサムウェアWannaCryに関するさらなる分析:マカフィー)。5月19日11時現在、3つの口座の総額は約8万8千ドル(約1000万円)、件数は304件となっている。世界的な流行にしては、支払った人は少ないと言えるだろう。
●支払ってもファイルは復元できない?

 ビットコインの口座が3つしかないのはWannaCryのバグだと思われ、それによって身代金を支払った人の特定ができなくなっている(シマンテック公式英語アカウントによるツイート1)。これでは払った人を特定できず、ファイルを元に戻すことができないと思われる。そのため犯人は支払い前に事前にメッセージを送る表示を出すように変更したようだ(シマンテック公式英語アカウントによるツイート2)。
●北朝鮮犯人説は臆測の段階

 一部のセキュリティー研究者が、北朝鮮の関与が疑われている過去の攻撃(ハッカー集団ラザルスグループへの関与)でのコードと、今回のWannaCryは共通性があるとしている(WannaCry ランサムウェアについて知っておくべきこと:シマンテック)。ただしセキュリティー各社はあくまで推測の段階だとして調査を進めている段階。まだ臆測だと考えていいだろう。
対策はネットの接続環境チェックとWindowsアップデート

 WannaCryの対策は、NISC内閣サイバーセキュリティセンターによるTwitterモーメント「現在拡散中の #ランサムウェア ( #WannaCrypt )への対応方法」と、JPCERT/CCによる「ランサムウエア "WannaCrypt" に関する注意喚起」にまとめられている。基本となるポイントは以下の3つだ。
★ランサムウェア・WannaCryへの対策

1:ネットの接続環境をチェックする

 ルーターやファイアウォールを使ってインターネットに接続しているか。ルーターやファイアウォールがなく、かつWindowsの脆弱性が残っている場合は感染の可能性があるので注意。WannaCryの感染のベースとなる裏口ツール「DoublePulsar(ダブルパルサー)」の感染がないか確かめ、下記の対策を行う(参考記事:世界各地で発生したランサムウェア WannaCry の感染事案についてまとめてみた:piyolog)

2:Windowsアップデートを行う

 原因となる脆弱性を解消するため、Windowsアップデートを行う。今回は特例としてサポートが終了しているWindows XPでもアップデートが可能になっているので実行したい。なお現時点のWannaCryは、Macやスマートフォンには感染しない。

3:ウイルス対策ソフトの最新版を入れて自動更新に

 ウイルス対策ソフトの最新版を導入し、かつ自動更新の設定にすること

 現時点では、暗号化されてしまったファイルを戻す方法は発見されていない。しかしWindows XPで特定の状況であれば元に戻す方法がみつかったとの報告もあるので、今後の解析に期待したい。

 今後のランサムウェアへの対策としては、感染に備えてバックアップを定期的に行うことも大切だ。USBメモリーや取り外しできるポータブルハードディスクにバックアップを取ることを勧めたい(PCに常時接続しているものは暗号化されてしまう危険性があるため)。
★参考記事

・2016年の10大事件に偽ポケモンGO、ランサムウェア:サイバー護身術

・暗号化で身代金要求「ランサムウェア」対策:サイバー護身術

・スマホ向けランサムウェア確認…日本語では初:サイバー護身術
2017年05月19日 15時58分 Copyright c The Yomiuri Shimbun









  


















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