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【新型コロナ、ワクチン開発の最前線】人への試験が始まった大阪産の国産DNAワクチンが、3つの「泣きどころ」をカバーする可能性も    
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: 2020/07/04(Sat) 17:17:59
かいけつ
https://www.47news.jp/47reporters/4966904.html
新型コロナワクチンに3つの「泣きどころ」 ・・大阪で人への試験始まる 開発の最前線

大阪大とベンチャー企業アンジェスが開発中のDNAワクチン(大阪大提供)
https://gansokaiketu-jp.com/Gazou/oosaka-san-dna-wakutin-kyodo.png


外出自粛の要請が解かれたものの、連日のように新規コロナウイルス感染症の報告が止まない。「イベントはいつ開けるか」「再び休業の要請もあるのだろうか」「いつになればマスクを外せるのか」。多くの人から疑問や不安の声が聞こえてくる。

 蔓延(まんえん)の終息点が見えづらい中、流行に終止符を打つ切り札として待望されているのが感染予防のためのワクチンだ。世界保健機関(WHO)の統計によると、6月29日の段階では、世界で人への試験が進むワクチンは17種類、人への投与する前の段階のワクチンは132種類となっている。ウイルス制圧に向けたワクチンプロジェクトは世界に広がっており、選抜が進んでいくことになる。

 日本でも大阪大学発ベンチャーのアンジェスを中心とした国産ワクチンの開発が本格化している。大阪府の吉村洋文知事は6月17日の記者会見で「世界でも競争が進む中で、大阪の医学レベルの高さを生かして、ワクチンの治験を開始する」と述べた。アンジェスは4月、大阪府や大阪市、大阪大学と協定を締結。タカラバイオ、フューチャー、ファンペップ、塩野義製薬グループという企業連携も進め、6月30日からは大阪市立大学医学部付属病院で第1段階の人を対象とした臨床試験を始めた。日本では、こうした国産ワクチンのほか、英国アストラゼネカが同国オックスフォード大学と開発を進めるワクチンを日本国内に供給する方向で、同社が日本政府との協議を開始したとこの6月に発表している。

 筆者は獣医師資格を持つ立場から、動物界のコロナワクチンの知見を踏まえ、新型コロナウイルス感染症の制圧につながる情報発信を続けている。最新研究に目を通しているが、徐々に新型コロナワクチンの課題も明確になってきている。ここで見えてきた「3つの泣きどころ」を指摘しつつ、ワクチンによる流行終息への道筋を考察していこうと思う。(ステラ・メディックス代表取締役、編集者、獣医師=星良孝)

米国立衛生研究所が臨床試験を始めた、新型コロナウイルスのワクチン投与を受ける女性=3月、ワシントン州シアトル(AP=共同)
https://gansokaiketu-jp.com/Gazou/america-de-hajimatta-wakutin-touyo-rinshousiken.png


 ▽世界で進むワクチン開発

 ワクチン開発は中国や欧米で先行している。先頭集団の一角を占める中国の研究グループは、この5月に著名医学誌『Lancet』で人を対象にした初めての成果を発表。中国の研究グループは、第1段階の試験として108人を対象にワクチン候補を投与し、安全性を中心に確かめている。結論として、ワクチン投与は安全で、ウイルス排除につながる抗体が増えたという報告だった。発熱やけん怠感、頭痛といった副作用と見られる症状についてはそれぞれ4〜5割の人で確認。一般的なインフルエンザなどのワクチンよりも体の反応は強く出るのかもしれない。ただ、重い副作用はなかった。中国のグループは既に次の段階の試験を進めている。

 欧米の同様に先行する研究グループも第1段階の試験により安全性を認めたことを報告し始めた。欧州では前述の英国オックスフォード大学のグループが1000人規模の人々にワクチン候補を接種して安全性を確認、1万人規模を対象にした次の段階に進むことを5月に発表している。米国モデルナ社のグループも第1段階の試験で155人を対象に検証して安全性を確認。第2段階として600人を対象にさらに安全性や効果の検証していく。

 これらワクチンが世に出ると、新型コロナ感染症の流行に終止符が打てるのか。中国のグループによる試験の報告に対して、カナダの専門家のグループは5月に『Lancet』で第三者の立場からコメントを寄せ、「抗体の上昇が認められているが継続的に抗体の上昇は続くのか」「ウイルスから身を守る効果があるのか」とこれからの懸念点を挙げた。この中でいくつかの指摘をしているが、ワクチン自体の安全性は大前提として保証する必要があるとして、複数の研究に目を通していくと、このほかにもワクチンには「3つの泣きどころ」とも言える、注意すべきポイントがあるのではないかと考えられる。

新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真(米国立アレルギー感染症研究所提供)
https://gansokaiketu-jp.com/Gazou/singata-CORONA-wirusu.png


 ▽「理想的ワクチン」へはまだ遠い

 一つは、ワクチンにより引き出される「免疫反応のターゲットの問題」だ。現在、世界で進められているワクチンによってできる免疫反応は、「いが栗」のような球形をした新型コロナウイルスの「トゲ」を狙ったものが多くなっている。このトゲは「スパイク(とげ)タンパク質(Sタンパク質)」というウイルスのいわば部品になる。多くのワクチンはこのトゲを狙った免疫反応を引き出すように作られている。

 一方で、新型ウイルスの持つ部品はほかにも「Nタンパク質」「Mタンパク質」などさまざまな種類がある。免疫反応は必ずしもSタンパク質に対して作用しなければいけないとは限らないわけだ。試すべきターゲットはほかにもあることからすると、Sタンパク質への免疫反応がうまくいかない場合に次に当たるべき「プランB」の検証が十分ではないと考えられる。

 もう一つ、盲点ともいえるのは「運び屋の問題」だ。ワクチンは免疫反応を引き出すために病原体の一部を接種して免疫反応を作る薬剤だ。その病原体の一部を体内へと送り込む運び屋には複数の選択肢がある。

 中国グループは人に無害と考えられる「アデノウイルス」というウイルスに病原体の成分を運ばせている。あまり知られていないのだが、このアデノウイルス自体への免疫反応を示す人が、国より異なるが3〜8割存在するのである。アデノウイルスが無害とはいえ、アデノウイルスという運び屋に免疫反応ができてしまうと、ワクチンがウイルスに作用する前段階で撃退される事態になりかねない。ワクチンを有効に効かせる上での盲点になる可能性がある。こうした運び屋にしてもさまざまな選択肢があり、先頭集団が採用している手法が最良であるとはまだ言えないのが実態だ。

 さらに「抗体依存性免疫増強(ADE)の問題」も立ちはだかる。ワクチンによってできた免疫反応を担う抗体がウイルスに結合すると、ウイルスが無力化されるのが理想的だ。しかし、実際にはADEと呼ばれる現象が起こる可能性がある。ウイルスに抗体という目印ができることで、白血球の一種がウイルスに結合し、これをきっかけにウイルスが白血球に侵入する問題が起きてしまう。結果として、感染症の重症化につながる恐れがあるのだ。

 このADEでよく知られているのが、2013年に日本国内でも発生して問題になったデング熱ウイルスがある。最初にデング熱ウイルスに感染したときには軽症でも、その後に再感染すると、最初の感染でできた抗体のおかげで感染症が凶悪化してしまう。ほかにも獣医領域では、猫のコロナワクチンで起こりやすいと知られており、ADEがあるためにワクチンがうまく作れないでいる。

 こうした3つの泣きどころを踏まえると「理想的ワクチン」への道はいまだ霧の中だ。

 ▽免疫反応には2つのタイプ

 最後のADEの問題を回避する意味で見逃せない考え方がある。ウイルスなどの外敵から身を守る「免疫反応」には大きく2つのタイプがあり、このバランスを意識してワクチンの効果を発揮させる考え方だ。

 細胞の仕組みを擬人化して表現した漫画『はたらく細胞』(清水茜、講談社)で分かりやすく表現されていたが、2つのタイプの免疫反応とは、「抗体」という砲弾を放つバズーカ砲を持った「B細胞」による遠隔攻撃の免疫と、肉弾攻撃を繰り出す殺し屋の「T細胞」による近接攻撃の免疫だ。ADEの問題では分泌された抗体が悪さをしてしまう一方で、T細胞はウイルスに感染した細胞ごと殺し、ADEの問題につながりにくいと考えられる。

 新型コロナウイルス感染症の症状にT細胞がどう影響するかはまさに関心事になっている。例えば、この5月に著名な生物学誌『Cell』で、米国の研究グループが、新型コロナウイルス感染症を経験していない人で既に新型コロナウイルスに抵抗力を示すT細胞を持っているケースがあると報告している。新型コロナウイルス感染症を防ぐ上で、「T細胞が重要では」と示す研究になる。なぜ新型コロナウイルスと無縁だった人が、抵抗力につながるT細胞を持っていたかと言うと、別の種類の風邪などを引き起こすコロナウイルスに過去に接しているためではないかと予測されている。

 少し前の研究になるが、香港の研究グループは16年、02年〜04年に発生したSARSの研究で、T細胞による免疫反応は11年間保たれると報告した。これはSARSウイルスへの抵抗力につながると指摘しており、T細胞がワクチンの効果と関係していると推測した。

大阪府庁でワクチン治験について説明する吉村洋文知事=6月
https://gansokaiketu-jp.com/Gazou/oosakafu-yosimura-tiji-kyodo-keisai.png


 ▽大阪産ワクチンは有利?

 実は、冒頭に紹介したアンジェスが開発している国産ワクチンの特徴は、ここまで示してきた新型コロナワクチンの泣きどころをうまくカバーする可能性を秘めている。国産ワクチンの強みとも言い換えられる。

 一つは、「免疫反応のターゲットの問題」だ。アンジェスが開発しているワクチンは「DNAワクチン」と呼ばれるタイプで、特徴として、遺伝情報をコントロールしやすい。そのため、さまざまなターゲットにカスタマイズしやすいのが有利と考えられる。開発中のワクチンは中国や欧米と同じようにSタンパク質への免疫反応を引き出すものだが、今後の展開に自由度が高い。

 さらに「運び屋の問題」についても、中国のグループのような問題が起きにくいと見られる。中国のグループが使っているアデノウイルスの代わりに「プラスミド」という非ウイルスの運び屋を採用しているためだ。アデノウイルスのように病原体ではないので免疫反応を引き起こしにくい。これにより、ワクチンを効率的に体内に送り込み、機能を発揮させられると考えられる。

 さらに「ADEの問題」においても、DNAワクチンは優位性がある可能性がある。DNAワクチンは、免疫反応を引き出す「Sタンパク質」に関係しているDNAを細胞に取り込ませ、継続的に細胞にタンパク質を作らせることで免疫反応を引き出す。T細胞の免疫反応を引き出すためには、別の細胞からT細胞に対して病原体の情報を受け渡すプロセスが必要になる。細胞の中でタンパク質を作り出すことになるDNAワクチンはT細胞にアプローチするために好都合と考えられる。

 新型コロナの問題が多方面で重大な影響を及ぼしている中で、ワクチンを国産で供給できる体制を整えるのが望ましいという見方は出ている。それだけに大阪での開発が成功するかどうかは注目されるところだ。

 未知のウイルスへの対処は困難が伴うが、未知のワクチンを完成させていく途上にもいくつもの壁が立ちはだかる。ワクチンが世に出てからも、広く分配したり、多くの人に接種してもらったりする新たな壁もある。ただ、ここまで述べたように実用化のための押さえどころは見えてきており、人の知識や知恵を結集していくことで理想的なワクチンに近づくことはできると予想する。

 ▽参考文献

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Moderna Announces Positive Interim Phase 1 Data for its mRNA Vaccine (mRNA-1273) Against Novel Coronavirus https://investors.modernatx.com/news-releases/news-release-details/moderna-announces-positive-interim-phase-1-data-its-mrna-vaccine/

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